番外編:私がタイにはまった理由●

裸一貫プーケット  私はタ○八郎・・・ その2



私はちょ〜近眼。
コンタクトレンズ無しでは5km先のシマウマどころか、手に持っているメガネさえも
探し回る程目が悪い。ただのボケって言われればそれまでだけど。

この旅行の為にわざわざ購入した使い捨てコンタクトレンズはトランクの奥深く
大事〜にしまいこんでいた。当然、行方不明。
コンタクトの使用上の注意を思い出す。

「一回装用したレンズは再度使用しない事」

んじゃ、外さなければいいじゃん!私ったら頭がいい。





第2日目:朝


視界が曇っていた。目がしばしばする。光化学スモッグ?いや、ちょっと違う。

コンタクトレンズが水分を失って眼球に貼り付いている。こりゃいかん。
唯一、手荷物に入れて持ち歩いていたコンタクトケアグッズ、マイティアCLをドボドボ
点眼して、干物状態になったコンタクトに水分を補給する。何とか視界は確保出来た。

手始めにフロントに荷物が届いていないかどうかの確認の電話を入れるが、無情にも
「Nothing」

今日はホテルの宿泊者への無料サービスでコーラル島ツアーへ。
綺麗な海でお魚になって気を紛らわそう・・・

水着はEちゃんのを借りた。
ビーサンは・・・まぁ、いいか。
着たきりすずめだったTシャツをコバルトブルーの海で洗濯して来るか。

島はホテル専用桟橋から高速ボートで20分程の所にあった。
まさに「コバルトブルーの海」
浅瀬に少しだけ足を入れただけでも、たくさんの魚達がエサをおねだりに
寄って来る・・・まさにハイエナ状態!

びっしりと生息したサンゴは素足の私には痛過ぎた。
スノーケルのフィンのおかげで何とか歩く事は出来たけど。

お昼時、ボートのスタッフに「ランチの準備が出来た」と呼ばれる。
喜びいさんでレストランに出向くと「ひとり300バーツ」。
おいおい、有料かぃ。さすが無料ツアー・・・。当然キャンセル。
意地でも食うもんかぁ〜!

美しいサンゴの海に泳ぐお魚さん達が、みんな美味しそうに見えた。


夕刻、ホテルに帰る、が、荷物の届いている気配はない。
航空会社に電話でクレームを入れると、荷物が届くまでの当面の
日常生活用品の購入代金は航空会社で負担するとの事。
しかし、万が一、荷物が二度と出てこなかったとしても、航空会社の
賠償額の上限は、日本円で約30000円
だってさ。

ふぅー、海外旅行傷害保険に入ってて良かったぁ。
と言っても、クレジットカード付帯の保険だけなんだけどね。
出発前に慌ててカードを作ったのさ。


この日はIちゃんの持っていたコンタクト洗浄液で使い捨てコンタクトを
丁寧に、腫れ物に触るように洗浄して寝る。




3日目


フリー。
みんなはビーチでまったり。
私は一人で近場まで、下着やTシャツを買いにぶらぶら歩いて出かける。

異国の地を一人で歩くのもいいもんだ。
この時感じた快感が、その後、私をひとり旅マニアに仕立て上げるんだなぁー。

岬の先端に位置するホテルから街までは、すんご〜く遠かった。
途中、喉が乾いてレストランに立ち寄る事2回。
カラカラに乾いた体中の細胞に、シンハは実によくしみわたった。

ちっちゃい集落で、かろうじて下着、シャツを数点購入、来た道を帰ろうと
トボトボ歩いていると突然のスコール。半端じゃなかった。
さっき寄ったレストランに駆け込んで、雨宿りをしていると
頼んでもいないのにシンハビールが出てくる。

客なんて誰もいなかった。
店の兄ちゃんと他愛のない話をしながらスコールが上がるのを待つ。
2時間で大瓶3本飲んだ。
タバコを吸いたくなって、兄ちゃんから2〜3本恵んでもらう。
その時吸った銘柄が"Falling Rain"
スコールで雨宿り・・・そのシュチュエーションと見事にマッチしていた
あのタバコは強烈な印象だった。ニコチン・タールも強烈だったけど。

ちなみに「Falling Rain」は、日本で言えば「ホープ」とか「ピース」みたいな、
ちょっと「ツウ」好みのタバコらしい。ブルーカラーの方々が好むとのこと。


さてさて、ホテルのビーチでまったりの友達は「ゆうこ失踪!」で大騒ぎに
なっていた。このスコールの中、4時間以上も帰って来ないのはおかしい!と。

赤い顔をして千鳥足で帰った私に、みんなは冷たかった・・・。





4〜5日目


一泊でピピ島へ。
島に行っちゃったら荷物なんて届くはずがない・・・

ここは開き直ってIちゃん、Kちゃんからも日替わりで水着を拝借する。
ピピ島の美しさは迷子の荷物の事なんてすっかり忘れさせてくれた。
ビーチで客引きをしている船頭のおっさんと交渉して船をチャーター、
ピピ島周辺の周遊と、スノーケリングを心ゆくまで楽しむ。

ピピ島沖でスノーケルを付けて飛び込んだ海は恐ろしく透明だった。
10mも20mもありそうな海底のサンゴが、少し手を伸ばせば触れるように見えた。
人間に荒らされていない海の魚達は人なつっこく寄って来る。

私は人魚・・・


そんな風に思いながらも、感動のあまり、スノーケルをくわえた口からは
「うぅー、うぅー、どぉうぅぅぅ〜!!」
トドもセイウチもシロクマも逃げだしそうな歓声は、スノーケルの空気孔を
伝って、船の上まで筒抜けだったらしい・・・。





6日目

最後のフリー。

ピピからプーケットのホテルに戻るものの、航空会社からのメッセージも
荷物の現物も無かった。

最終日は各自が自由行動。

IちゃんとKちゃんは「007」のロケで一躍有名になったパンガー湾へ。
Eちゃんは浜辺でお絵かき。
私はスノーケルを借りて付近の海底散歩。

スノーケルと足ヒレを付けたうれしさで、しばらくはお絵かきをしている
Eちゃんから見える範囲で泳いでいたものの、ピピでのスノーケリングで
コツを覚えた私の事、調子に乗ってどんどん沖へと進んで行った。

足ヒレキックで進む距離と言えば、素足でのそれに比べて驚く程早い。
沖の方に流れる海流に飲み込まれるまで、そう長い時間は要しなかった。

ふと気が付くとホテルのプライベートビーチがはるか彼方にあった。
「やばい・・・」
必死で戻ろうとするが、海流の流れはものすごく速く、むしろ更に沖に
流されて行くような感覚を覚えた。
「まじで死ぬかも・・・」
その時脳裏をよぎったのは、酔っぱらい状態で果敢にも大海原に挑み、
その短い生涯を終えたタコ八郎師匠だった事は言うまでもない。

そんな状況の中、またもやスコールに襲われる。
陽ざしが無くなった海の中で、「もう、どうにでもなれ・・・」と
思いかけたその矢先、背後に浮かぶ一艘の漁船を発見した。
漁船は海流の流れる先にある。このまま流されて行けば漁船に助けて
もらえるかも・・・。

船までの距離はみるみる近付いて行った。
タイ人の青年二人がデッキで話をしていた。

「Please help me〜!」

波間から海坊主のごとく、突如として現れたニッポン人には、さすがに
多少びびっていたように見えたが、快く船のキャビンで休ませてもらう事に。

二人はランチの途中だった。
ビールの空き缶が3〜4本転がっている。

「飲む?」

一本のビールを差し出される。ご厚意はありがたく受け取っておこう(^-^)v

自分の国の事、学校の事、兵役の事・・・色んな話をしながら、
飲んだビールは3本・・・疲れた体の隅々まで染みわたった。

いつの間、コールはすっかり上がっていた。
雨上がりの澄んだ空気の中に浮かぶプーケット島のホテルはすぐ近くに
あるように見えた。

「ごちそうさま〜!帰るね〜!!」

そう言い残し、スノーケルを再度着用、海に飛び込んでビーチを目指す。
が、近くに見えたビーチは船の上から高い視線で見ていたからだった。

海面から眺めるビーチはやっぱり遠い・・・
おまけにビールのおかげでキックにも力が入らない。
ビーチに近付くどころか、さらに海流に乗って沖の方に流される・・・。

漁船から青年達が笑いながら眺めていた。
「だめだこりゃ」(長さん風)
そんな風に思ったんだろうか、漁船はエンジンを始動、アンカーを上げて
私を捕獲に来てくれた。

結局、ビーチ近くギリギリまで送ってもらう事になる。



またもや「ゆうこ失踪」で、ビーチでは捜索網が敷かれていた・・・。



●    ●    ●


漁船で話していた事のひとつひとつが私にとっては目からうろこだった。
20歳そこそこの青年が家計を支えている事や、兵役に行った時の話も
ショキングだった。
鉄砲打ちながら走り回ったんかぃ、あんた・・・。
体格なんて、日本人の中では割ときゃしゃ(しかし、でかい)な部類に
入る私とも大して違いはないように感じられた。そんな君がねぇ・・・。

タイ人の考え方や生活について、もっともっと知りたいと思うようになったのは
この海での出来事がきっかけだった。。


     ●    ●    ●


何とか生きて帰国した。
航空会社から支払われた保険金は「見舞金」という名目で約27000円

カード付帯の海外旅行傷害保険に保険金請求をした。

保険金請求書には、携行品ひとつひとつについて、詳細に値段、メーカー、
購入価格等を記入する。

近所のスーパーで買った着古したTシャツは、本当はラルフローレンの新品
だったような気がしたので、そう書いてみたりした。
人間の記憶なんてアテになんないもんね・・・

保険金の支払限度額ぎりぎりに近い額の保険金が支払われた。
お世話になったEちゃん、Iちゃん、Kちゃんにビールをご馳走しても
タイにあと2回行けそうな位のお金が残った。

そろそろスーツケースや水着、カメラなんかを買おうかなぁ・・・
そんな風に思ってた矢先、旅行会社から連絡が入る。
荷物が成田空港で発見されたらしい。
早速引き取りに行くと、中身の確認の為か、カギは壊されていたものの
すべてが無事だった。
話によると出発の日、チェックインカウンターにそのまま置き去りに
されていたらしい。何と、出国さえしていなかった!

旅行会社のお兄さんは恐縮しまくっていた。
「ここだけの話にしておきましょう・・・もう、保険金は受け取られて
いますよね?」
話がわかるお兄ちゃんだった。



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タンパク質が蓄積されて白く濁った使い捨てコンタクトレンズを通してしか
見れなかったタイの海をもう一度見たかった。


漁船で出逢った青年の、浅黒くて爽やかな笑顔にもう一度逢いたいと思った。



そんなわけで、タイにどっぷりはまるきっかけとなった
小さな出来事の数々を書き連ねてしまいました。

歳をとると昔話を多く語りたがるようになるんだよな・・・
と言われても否めません。

が、そこらの年寄りと少しだけ違うのは、こうして書き連ねる事によって
己のタイフリーク振りを再認識し、ビルダーを立ち上げてるその裏で
格安航空券の検索なんかをしちゃったりしてる所なんです。でへっ(^-^ゞ



お付き合いありがとうございました。


おしまぃ


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